緞帳「南総讃歌」演出コンセプト

緞帳「南総讃歌

東京湾横断道路の開通を間近に控え、東京近郊の大リゾート地として「南房総」は今、熱い視線を注がれています。その中核都市となるべく、館山市に「千葉県南総文化ホール」が今まさに、産声を上げようとしています。

澄み渡る空、眼下に拡がる美しい海。吹き抜ける潮風に身を委ねていると、至福の空間が私を包んでくれます。振り返れば、色鮮やかな花達が美しいドレスを大地にまとっています。ほのかに漂う花の香は、どんなに高価な香水にも替えがたい、艶やかさを与えてくれます。

旅の途中に、ひとつの本を手にしました。表紙には「南総里見八犬伝」と書かれています。戦国の時この地を治めていた、里見氏を題材に書かれた物語とのこと。しばし読耽り、当時の様子を模索してみました。時代を越えて語り継がれる物語、作者「曲亭馬琴」の創作意欲をかき立たせたのは、この豊かな自然があったからなのではないかと、思わずにいられません。

今も尚、「南総里見八犬伝」の題材となった史蹟の数々を、大切に残してきた南総の人々の文化と、歴史を重んじる姿勢は、軽視されやすい現代に対する呼び掛けのような気がして止みません。

題名—–南総讃歌

(以下、ナレーションのセリフです。)

間口18メートル、高さ9メートル、この舞台にかかる緞帳は、東京湾と太平洋の青い海と、真冬でも葉の花が咲く、温暖な気候、色とりどりの花畑など、豊かな自然を持つ南房総のイメージを、ホール内装との調和を考慮した暖かみのある柔らかな色調でモダンに表現されています。

画面下には、青い海に群れる魚と珊瑚を描き、波の上の黄・オレンジ・赤・紫緑などの円の重なりは、色鮮やかに咲き誇る花畑を表し、花畑の背景には白浜方面から平砂浦を望む山並みを配し、壮大に描かれています。

西陣本綴錦織り地のこの緞帳は、多彩に染色された糸素材をもとに綴れ織り伝統の技術を駆使し織り上げられたものです。そして暗転時には匠の技で織り込まれた新素材光ファイバーが緞帳を一変するファンタジックな光を放ちます。

爽やかに吹き抜ける潮風とほのかな花の香り、二筋の光の風がこの地南房総に新しい命を運びます。

中央から天高く立ちのぼる一筋の光。

「南総里見八犬伝」に登場する伏姫からつけていた数珠が飛び散ります。(写真参照)

「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」数珠は天空に輝く八つの光の点となり、やがて、きらきらと輝きながら、まばゆい光を放つ星となって感動の瞬間を永久に刻んでいきます。

天空から降り注ぐ光のシャワー、それはあらゆる命の源である太陽の光。

応えるように沸き上がるのは、豊かな大地から芽生え出で命の息吹。

青い海と色鮮やかに咲き誇る花々を背景に新素材光ファイバーが繰り広げる幻想的な光の饗宴、それは、伝説の地、南房総に豊かな芸術文化活動の拠点としての新たな幕開けを願って創作された緞帳、「南総讃歌」。

—これからの県民の芸術文化活動に、大きな役割を担っていくに違いありません。—